Leaves
観葉植物の下の葉が黄色くなるのはなぜ?
観葉植物の鉢を見ると、下のほうの葉が一枚だけ黄色くなっていることがあります。触るとやわらかく、軽く引くと取れてしまいます。
水が多すぎたのか、肥料が足りないのか。原因の候補が多くて、どれから確かめればいいのか迷います。
このとき手がかりになるのが、黄色くなった葉が株のどこにあるかです。下の古い葉からか、新しい葉からかで、考えられる原因が変わります。
植物が使う養分には、株の中を移動しやすいものと、移動しにくいものがあります。
窒素のように移動しやすい養分が足りなくなると、古い葉から回収されて新しい葉へ送られます。そのため、下の古い葉から先に黄色くなります。
鉄のように移動しにくい養分は、古い葉から運び出せません。足りなくなると、新しい葉のほうから色が薄くなります。
ただし、下の葉が少しずつ黄色くなること自体は、株が古い葉から材料を回収している正常な働きの場合もあります。
なお、この記事で参照した研究は、シロイヌナズナやイネ、コムギなどが対象です。室内で育てる観葉植物そのものを調べたものではありません。この点は本文でも都度ふれます。
見分けるために見るところ
アメリカのミズーリ大学がまとめた養分欠乏の診断資料では、症状が出る場所を、養分の移動しやすさで分けています(ミズーリ大学の資料)。
- 古い葉から症状が出る:窒素、リン、カリウム、マグネシウム。株の中を移動しやすい養分です。
- 若い葉から症状が出る:鉄、マンガン、亜鉛、銅、ホウ素、塩素、ニッケル、カルシウム、硫黄。移動しにくい養分です。
- 中間の葉から出る:モリブデン。
この資料は農作物の診断を目的にしたものです。観葉植物で同じ順に症状が出るかを直接確かめた資料ではありません。ただ、養分が株の中を動けるかどうかという仕組みは、症状の出る場所を考える手がかりになります。
古い葉の窒素は、新しい葉へ運ばれます
葉が緑色に見えるのは、葉緑体の中にクロロフィル(葉緑素)という色素があるからです。葉緑体には、光合成で二酸化炭素を取り込むルビスコというタンパク質も多く含まれます。植物の体にある窒素のかなりの部分は、こうしたタンパク質として葉にあります。
窒素が足りなくなると、古い葉の中でタンパク質が分解され、アミノ酸などの形で新しい葉や成長する部分へ送られます。この移動を「再転流(さいてんりゅう)」と呼びます。
シロイヌナズナから作物までの研究をまとめた総説では、葉の老化を、養分をリサイクルして送り出すために必要な発達の過程として説明しています(Havéらの総説)。この総説では、細胞が自分の一部を分解するオートファジーという仕組みが、窒素を送り出す効率を決める中心的な役割を持つとされています。
窒素が足りないときに葉が老化していく分子の仕組みを整理した論文では、ルビスコなどの葉緑体タンパク質が複数の経路で分解され、クロロフィルも専用の酵素によって段階的に分解されることが説明されています(Sakurabaの総説)。
クロロフィルが分解されると、葉の緑は薄くなります。下の古い葉が黄色くなるのは、この分解と送り出しが起きた結果として説明できます。
つまり下葉の黄変は、「葉が壊れた」というより「株が古い葉から材料を回収した」状態に近いといえます。ただし、これらの研究はシロイヌナズナ、イネ、トマトなどが対象です。観葉植物で同じ速さや順序で起きるかまでは確かめられていません。
動きにくい養分は、新しい葉から足りなくなります
鉄やカルシウムのように移動しにくい養分は、いったん古い葉に入ると、そこから運び出しにくい性質があります。
そのため足りなくなっても、古い葉の色は保たれたまま、新しく開く葉のほうから色が薄くなります。
新しい葉が黄色い一方で下の葉が緑のままなら、窒素不足とは別の原因を考える手がかりになります。逆に、下から順に黄色くなっていくなら、移動しやすい養分の側から考えられます。
ただし、葉の色が薄くなる原因は養分だけではありません。光の量、根の傷み、病害虫でも葉の色は変わります。葉の位置だけで原因を決めることはできません。
水のやりすぎでも、下の葉が黄色くなります
ここが判断を難しくします。肥料が足りないときだけでなく、水が多すぎるときにも、下の葉が黄色くなることがあります。
土が長く水で満たされると、土のすき間から空気が追い出され、根のまわりに酸素が届きにくくなります。過湿の影響をまとめた総説では、酸素が減った根が、酸素を使わない呼吸へ切り替えを迫られることが説明されています(Zhangらの総説)。
同じ総説では、過湿によって土の中の有機物が分解されにくくなり、放出される窒素が減ることも指摘されています。その結果、葉の黄化などの窒素欠乏の症状が、過湿のあと間もなく現れると説明されています。
肥料が足りない場合も、水が多すぎる場合も、株から見れば窒素が足りない状態になりえます。どちらでも下の葉から黄色くなるため、葉の位置だけでは区別できません。
ここで鉢の乾き方が手がかりになります。水やりから数日たっても鉢が重いまま、土の表面も湿ったままなら、肥料を足す前に土の乾き方を確認する、という順序が考えられます。
なお、この総説が扱っているのはトウモロコシ、コムギ、イネなどの畑の作物です。鉢で育てる観葉植物とは、水のたまり方も根の広がりも違います。
鉢と葉を一緒に記録します
黄色い葉を見つけた日に、次の四つを控えておくと、同じ株の中で比べやすくなります。
- 黄色くなったのは下の古い葉か、新しい葉か
- 一度に何枚か、それとも何日かかけて一枚ずつか
- 前回の水やりから何日たち、鉢はどのくらい軽くなったか
- 葉全体が均一に黄色いか、葉脈だけ緑で残っているか
葉先から水滴が出ている株では、モンステラやポトスの葉先から水滴が出るのはなぜ?も合わせて確認できます。水滴だけでは過湿と決められない点は、葉の色と同じです。
下の葉が一枚ずつ、間隔をあけて黄色くなり、新しい葉が問題なく出ているなら、古い葉から養分を回収している状態かもしれません。一方で、短い間に何枚もまとめて黄色くなる、新しい葉まで色が薄い、鉢がいつまでも重いといった変化が重なるときは、根の側の状態も一緒に考える必要があります。
この記事で分からないこと
- 今回参照した研究は、シロイヌナズナ、イネ、コムギ、トウモロコシ、トマトなどが対象です。モンステラ、ポトス、パキラのように室内で育てる観葉植物そのものを調べたものではありません
- 「下の葉が何枚黄色くなったら肥料不足」と判断できる基準を示す資料は、今回の範囲では見つかりませんでした
- 肥料の種類、量、与える間隔を決められる研究データも、今回の資料には含まれていません
- 葉が黄色くなる原因には、光不足、根詰まり、病害虫など、今回扱っていないものもあります
Sources — 参考文献・原典
- Havé et al. (2017), Journal of Experimental Botany
- Sakuraba (2022), Frontiers in Plant Science
- Zhang et al. (2025), Frontiers in Plant Science
- University of Missouri IPM「Diagnosing Nutrient Deficiencies」
※リンク先で、研究の対象や条件を確かめられます。研究結果をすべての植物や状況に当てはめられるとは限りません。
