Seasons & Growth
観葉植物の水やりを冬に減らすのはなぜ?
冬になると、観葉植物の水やりは控えめに。育て方の説明でよく見かける一文です。
冬の水やりを減らす理由は、成長が止まるからだけではありません。根のまわりが冷えると、水そのものが動きにくくなり、根の中の水の通り道も閉じます。吸い上げが減って土が乾かなくなる仕組みを、研究で分かる範囲に限って整理します。
そのとおりにしてみると、確かに鉢の土がなかなか乾きません。夏は三日で乾いていた鉢が、冬は一週間たっても湿ったままだったりします。同じ部屋で、同じ鉢なのに、乾き方が変わります。
「成長が止まるから水を吸わない」と説明されることが多い部分です。ただ、根のほうで何が起きているのかを調べると、それだけではない話が出てきます。この記事では、根が冷えたときに水の吸い上げがどう変わるのかを、研究で確かめられている範囲で整理します。
冷えた根は、水を通しにくくなる
先に、この記事で分かることを書きます。
根が水を吸い上げる量は、株の成長の勢いだけで決まるわけではありません。根のまわりの温度が下がると、根が水を通す能力そのものが下がることが、複数の植物で測られています。
研究では、二つの要因が関わると考えられています。一つは、水そのものが冷えると動きにくくなること。もう一つは、根の細胞にある水の通り道の働きが変わることです。
結果として、水をやっても以前ほど吸い上げられず、土が長く湿ったままになりやすくなります。冬の水やりを見直す理由の一つは、根が水を吸いにくくなることで、鉢が乾くのに時間がかかるためです。
根が水を通す量は、温度で変わる
根がどれだけ水を通しやすいかを表す値を、研究では根の水透過性(hydraulic conductivity)と呼びます。この値は、根の温度によって変わります。
イネを使った研究では、根の温度を下げていくと水を通す量が減り、15℃あたりで変化のしかたが切り替わる点が見つかったと報告されています(Plant and Cell Physiologyの研究)。温度が下がるほど一定の割合で減るのではなく、ある温度から先で様子が変わる、という結果です。
別の研究では、根の温度に対する敏感さが、根の水を通す性質と結びついていることが報告されています(根の低温感受性と水透過性を調べた研究)。
理由は二つある
なぜ冷えると通しにくくなるのか。研究では、二つの理由が挙げられています。
一つめは、水そのものの性質です。水は冷たくなるほど粘りが強くなり、細いすき間を流れにくくなります。これは植物の反応ではなく、水の物理的な性質です。
二つめは、根の細胞にある水の通り道です。細胞の膜には、水を通すための専用の通り道があり、アクアポリンと呼ばれます。低温で、この通り道の働きが変わる植物があることが調べられています。
キュウリとシロウリカボチャを比べた研究は、この点を分かりやすく示しています。低温に弱いキュウリでは、根の温度が下がると細胞の水透過性が大きく下がりました。一方、低温に強いシロウリカボチャでは、その低下がほとんど見られませんでした(Journal of Experimental Botanyの研究)。水の粘りは、どちらの植物でも同じように変わります。それでも差が出たということは、水の物理的性質だけでは説明がつかない、と読めます。
さらに、シロイヌナズナで水の通り道を作る遺伝子を強く働かせたところ、低温による水透過性の低下が部分的にやわらいだ、という報告もあります(PIP2;5の過剰発現を調べた研究)。低温の影響が、この通り道を通して現れていることを支持する結果です。
減った分だけ、土が乾かなくなる
ここまでは根の話です。鉢の土が乾かない理由には、もう一つ、葉の側の事情も重なります。
植物は葉から水を空気中へ逃がしていて、これを蒸散と呼びます。冬は気温が下がり、日照時間も短くなります。窓辺に置いていても、夏ほどの光は当たりません。蒸散が減れば、株全体として動かす水の量も減ります。
つまり冬の鉢では、根が吸い上げにくくなることと、葉から出ていく量が減ることが同時に起きています。土に入った水が減りにくくなるのは、そのためです。
問題は、ここで夏と同じ間隔で水をやった場合です。土のすき間が水で埋まった状態が続くと、根のまわりの酸素が減ります。作物での研究をまとめた資料では、土が過湿になると根の働きが落ち、葉の黄化や老化が早まることが報告されています(Waterlogging stress in plantsの総説)。
冬に根を傷めやすいと言われるのは、寒さそのものだけが理由ではありません。吸えなくなっているところへ、以前と同じ量の水が入り続けることが重なります。
根のまわりで酸素が減ると何が起きるかは、根腐れはなぜ起きる?過湿で根が酸欠になる仕組みで扱っています。
鉢の前で確かめられること
具体的な日数や水の量は、これらの研究からは決められません。次は、自分の鉢で見られることです。
- 前回の水やりから、土が乾くまでの日数。 夏と冬で何日違うかを一度数えておくと、間隔を決める材料になります。
- 鉢の表面ではなく、中のほうの湿り気。 表面が乾いていても、中が湿っていることがあります。指を入れる、割りばしを差すなど、確かめ方は問いません。
- 鉢が置かれている場所の温度。 気にすべきは室温そのものより、鉢のまわりです。窓ぎわの床、コンクリート、外壁に近い場所は、部屋の中でも冷えます。
- 夜間の冷え込み。 昼に暖房が効いていても、夜に窓ぎわで冷える置き場所では、根が冷える時間が長くなります。
- 受け皿にたまった水。 冬は乾きにくいため、たまったままの時間が長くなりやすい部分です。
温度を測るなら、部屋の真ん中ではなく、鉢が実際に置かれている高さと場所で測るほうが、根のまわりの状況に近くなります。
どこまでが確かめられているか
この記事で根拠にした研究は、イネ、キュウリ、シロウリカボチャ、シロイヌナズナを対象にしたものです。観葉植物として育てられる種そのもので、同じ温度と同じ変化を測った研究ではありません。
とくに注意したいのが、温度の数値です。15℃という切り替わりの点はイネで報告されたもので、すべての植物に共通する境目ではありません。低温にどのくらい弱いかは、上のキュウリとシロウリカボチャの比較のように、植物によって差があります。原産地の気候が違えば、冷えへの反応も変わると考えられます。手元の観葉植物にとっての境目が何度かは、ここで挙げた資料からは言えません。
また、これらは根の温度を実験的に管理した研究です。部屋に置かれた鉢では、土の温度は一日の中で上下し、鉢の大きさや材質、置き場所でも変わります。研究と同じ条件ではありません。
「冬は水やりを減らす」という言い方についても、注意が必要です。水やりの間隔をどの程度変えるか、一回に与える量をどうするかを、今回の研究から決めることはできません。鉢が乾くまでの日数を観察するのは、研究で分かる根の反応を、室内の鉢で考えるための手がかりです。
まとめ
- 根のまわりの温度が下がると、根が水を通す量が減ることが、複数の植物で測られています。
- 理由は二つあり、水そのものが冷えて動きにくくなることと、根の細胞にある水の通り道が閉じることです。
- 低温に弱い植物と強い植物で低下の大きさが違ったことから、水の物理的性質だけでは説明がつかないと考えられています。
- 冬は蒸散も減るため、根と葉の両側で水の動きが小さくなり、土が乾きにくくなります。
- 吸えない状態に同じ量の水が入り続けると、根のまわりが酸欠になります。
- 温度の数値は対象の植物によって変わり、観葉植物そのものを測った研究ではありません。
冬の水やりを考えるときは、カレンダーの日数だけでなく、鉢が乾くまでにかかる日数も手がかりになります。まずは、夏と冬で何日違うのかを一度数えてみてください。
Sources — 参考文献・原典
- academic.oup.comで読む
- academic.oup.comで読む
- PubMedで読む(PMID: 22434042)
- sciencedirect.comで読む
- sciencedirect.comで読む
※リンク先で、研究の対象や条件を確かめられます。研究結果をすべての植物や状況に当てはめられるとは限りません。
