Leaves

多肉植物の葉は、なぜ分厚いの?

· 最終更新日 2026/7/29

多肉植物の葉は、乾くと薄くしぼみ、水を得るとまた張りを取り戻すことがあります。同じ一枚の葉の中で、水はどこに収まり、どこから減っていくのでしょうか。

多肉植物の葉が分厚いのは、水をためる場所があるからです。乾くとしぼみ、水を得ると戻る葉の中を、研究をもとにやさしく見ていきます。

厚い葉のなかで起きていること

多肉植物の葉が水をためる場所の模式図

アガベや多肉の葉を切ると、外側の緑と、内側の透きとおったゼリーのような部分に分かれていることがあります。同じ一枚の葉なのに、色も手ざわりも違います。

この違いは、見た目だけの問題ではありません。葉の中で「仕事の分担」が起きている、というのが今回の話の入り口です。

いくつかの研究では、多肉の葉の内部が、おおまかに二つの組織に分かれていると報告されています。

この記事の問いはシンプルです。なぜ葉は分厚くなるのでしょうか。そして、乾くと葉がしぼみ、水をやると戻るのは、この二つの組織にどう関係しているのでしょうか。

先に立場をはっきりさせておきます。ここで「守る」「バッファ(緩衝)」といった言葉を使うときは、論文が直接書いていることと、私(書き手)がそこから読んだ解釈とを、できるだけ分けて書きます。属や種によって構造は違うので、「多肉はぜんぶ同じ」とは扱いません。

水をためる場所は、葉のどこにある?

まず用語を、普通の言葉から。

葉や茎の内側には、細胞がぎっしり詰まった「柔らかい組織」があります。専門的には柔組織(じゅうそしき)と呼びます。そのなかで、水を貯めることに特化した、色のうすい大きな細胞の集まりを、貯水組織(含水柔組織/hydrenchyma、ハイドレンキマ)といいます。

複数の研究レビューでは、多肉の組織にはこの貯水組織があり、その細胞壁は水が抜けると折りたためるようにできている、と整理されています(PubMed 35167681)。つまり水を出したあと、細胞が完全に壊れずに縮む構造がある、という記述です。

葉のどこにあるかは、調べられた分類群ごとに報告があります。

ここまでは、それぞれの論文が「そう記載している」という事実です。共通して読めるのは、緑の組織が外側、水の組織が内側、という空間の分業が繰り返し見つかっているという点です。

葉が分厚くなる理由の一つは、この水を貯める組織の分だけ体積が増えるから、と読めます。ただし厚さの決まり方には他の要素もあり、ここでは「貯水組織があると厚くなりうる」までにとどめておきます。

乾燥時のしぼみ:どの組織から水が抜けるか

土が乾いていくと、葉は水を外に逃がしにくくしながら、体の中の水を使います。このとき、葉の中の水を引っぱる力(水ポテンシャルの低下)が強まります。

アロエ(Aloe)を対象にした乾燥応答の研究では、乾燥が進むと貯水組織の細胞壁が、規則正しく折れ曲がるように変形する様子が顕微鏡で観察され、これが貯めていた水を再び使えるようにすることと関係する可能性が示されています(PubMed 30980422)。この研究でも、外側には光合成をする緑の組織(chlorenchyma)があると記載されています。

ここから読めることを整理します。

「しぼみ」は、こうした壁が壊れずに折れて縮む変化として説明できる場面がある、ということです。すべての多肉で同じ壁のたたみ方が確認されたわけではない点は、あとの注意で触れます。

葉がしぼむことは、なぜ役に立つ?

ここからは、論文の記述をもとにした私の解釈であることを、はっきり書いておきます。

論文から確実に言えるのは、次の三つです。

  1. 緑の光合成組織と、色のない貯水組織は、葉の中で場所が分かれています(複数の分類群での記述)。
  2. 乾燥時、貯水組織の細胞は壁を折りたたむように縮み、貯めた水を出す方向に動きえます(アロエでの観察、レビューでの整理)。
  3. ハマミズナ科では、内部の貯水組織が水と栄養の「たくわえ」として機能すると解釈されています(PubMed 24127513)。

これらをつなぐと、貯水組織が先に水を手放す「水の緩衝帯(バッファ)」として働き、その間、緑の組織の水分状態を相対的に保ちやすくする、という読み方ができます。葉全体の水の通りやすさ(葉の水利用の抵抗)にも内側の組織が大きく関わることが、別の総説で論じられているので(PubMed 23874349)、内側の貯水組織を「水を出し入れする役」として扱うことは、生理学的におかしくはありません。

ただし注意したいところです。「貯水組織が光合成組織を守る」と一つの文で断言している一次資料を、今回はっきり確認できたわけではありません。 「場所が分かれている」「貯水組織が水を出す」「水と栄養をたくわえる」という個別の記述から、私が「守る」という筋書きを組み立てています。だから、これは強く示唆される仮説であって、種をまたいで証明された事実ではない、という位置づけにしておきます。

CAM(夜に気孔を開けて二酸化炭素をためる代謝)との関係も、一括りにはできません。ある研究では、アロエの一種(Aloe arborescens)で、CAMに関わる物質(リンゴ酸)の一日の増減が主に緑の組織で見られ、中央の水組織では乏しかったと読めます(PubMed 40111483)。これは「その種では、CAMの代謝は緑側に偏る」という一例であり、「CAM植物では貯水組織がこう働く」と一般化する根拠にはなりません。

復元のプロセスと限界

水をやると、根から吸い上げた水が組織に戻り、細胞の内圧(膨圧)が回復します。折りたたまれていた壁が広がれば、葉の体積は元に近づきます。これが「しぼんだ葉が戻る」場面の説明です。

大事なのは、戻る(可逆)には限界があることです。

レビューでは、多肉の壁が折りたためる=可逆的な体積変化を起こしうると同時に、乾燥が強すぎたり、損傷が重なったりすれば、細胞や壁が壊れて元に戻らない可能性があることも読み取れます(PubMed 35167681)。

つまり、こう言えます。

どこが「戻る」と「戻らない」の境目なのかを、種ごとに数値で示した資料を、今回はっきり確認できていません。ここは分からない、と正直に書いておきます。

栽培では、どこを見ればいい?

ここまでを、自分の株を見るときの目安に落としてみます。断定ではなく、観察を助ける見方として読んでください。

「何日で何ml」といった具体的な数値は、あなたの株・鉢・置き場所の直接の根拠がない限り、ここでは出しません。しぼみと復元は、水やりを決める唯一のスイッチではなく、株を読むための一つの手がかりとして扱うのが、無理のない使い方だと考えます。

出典の限界と不確実性

この記事で使った一次資料は、対象とする植物がそれぞれ違います。アロエ、アガベ、サンセベリア、ハマミズナ科などで、貯水組織の位置や割合、壁の作りは同じではありません。ある種で確認された動きを、別の属にそのまま当てはめないでください。

特に、以下は「まだ確かではない」ものとして残しておきます。

原典は、ここに挙げたPubMedの各ページから、要旨(アブストラクト)と、可能なら本文で確認できます。要旨だけでは方法や条件が分からない部分があるので、より深く読む場合は原著論文にあたってください。

分からないことを分からないまま残したのは、きれいにまとめるより、あなたが自分の株で確かめる余地を残すためです。

Sources — 参考文献・原典

※リンク先で、研究の対象や条件を確かめられます。研究結果をすべての植物や状況に当てはめられるとは限りません。