Light & Place
赤くならない多肉植物は、どうやって強い光から身を守るの?
強い日差しに当たると、葉が赤や紫になる多肉植物があります。ところが、緑色のまま元気に育つ株もあります。
強い光を浴びても、赤や紫にならない多肉植物があります。葉の中で余った光を逃がす三つの仕組みを、研究論文をもとにやさしく説明します。
赤くならない株は、光から身を守っていないのでしょうか。
答えは「そうとは限らない」です。植物には、葉の色を変える以外にも、強すぎる光をやり過ごす仕組みがあります。
この記事では、その中から三つを紹介します。ただし、ここで使う研究の多くは、多肉植物ではなく、シロイヌナズナやタバコなどで行われたものです。アガベや多肉植物でも同じように働くかは、まだ分からない部分があります。
光は多すぎても困る
植物は光の力を使って、二酸化炭素から糖を作ります。これが光合成です。
光は植物に必要ですが、強すぎると使い切れません。たとえるなら、お皿に食べきれないほど料理を盛られたような状態です。
余った光の力が葉の中にたまり、酸素と反応すると、葉を傷つける物質ができることがあります。これを活性酸素といいます。
光を受け取る大切な部分が傷つき、光合成する力が下がることを、**光阻害(こうそがい)**といいます。見た目ではまだ葉焼けしていなくても、葉の中では負担が始まっていることがあります。
そのため植物は、使い切れない光を逃がさなくてはなりません。
赤や紫になるのも、身を守る方法の一つ
葉が赤や紫になるのは、アントシアニンなどの色素が増えるためです。
この色素は日よけのように光を減らしたり、活性酸素の働きを弱めたりします。ただし、植物が光から身を守る方法はこれだけではありません。
葉の色が変わらなくても、受け取った光を葉の中で逃がしていることがあります。ここからは、その三つの仕組みを見ていきます。
1. 余った力を使う「光呼吸」
植物が二酸化炭素をつかまえるときは、ルビスコというたんぱく質が働きます。
ところがルビスコは、ときどき二酸化炭素ではなく酸素をつかまえます。すると光呼吸という反応が始まります。
光呼吸が起きると、植物は一度つかまえた炭素の一部を手放します。糖を作るだけなら、少しもったいない反応です(Wingler et al., 2000、Bauwe et al., 2012)。
しかし光呼吸は、葉の中で余った力を使うため、強い光による傷をやわらげる場合があります。
つまり光呼吸は、少し遠回りをしながら、余った力を片づける道とも考えられます。
2. 光を熱に変えて逃がす
葉の中では、光から受け取った力を運ぶ小さな粒が動いています。この粒を電子といいます。
電子はふつう糖を作るために使われますが、光が強すぎると余ってしまいます。
そこで植物は、電子を同じ場所のまわりでぐるりと回すことがあります。正式には**サイクリック電子伝達(CEF)**と呼ばれる仕組みです。
この動きによって、葉は余った光を熱に変えて外へ逃がしやすくなります(Yamori & Shikanaiに関する総説)。
ここで大切なのは、赤い色素がなくても光を逃がせることです。葉が緑色のままでも、中では光を熱に変える仕組みが働いているかもしれません。
3. 電子を別の出口へ流す
余った電子を、酸素のほうへ流す道もあります。水から取り出した電子が、いくつかの反応を通って最後にまた水になるため、水−水サイクルと呼ばれます。
ただし、この道がどれくらい植物を守っているのかは、まだ意見が分かれています。
- 電子を逃がす力はあまり大きくない、という研究があります(Ort & Baker, 2002)。
- 光を受け取る部分の傷を減らすのに役立つ、という研究もあります(Roach & Krieger-Liszkay, 2014)。
- 強い光のときだけ、電子の出口になる仕組みが動くという報告もあります(Krieger-Liszkay et al., 2024)。
植物の種類や、光の強さによって働き方が変わるのかもしれません。今の研究では、どの植物でも同じように働くとは言えません。
多肉植物では、どこまで分かっている?
アガベや多くの多肉植物は、夜に二酸化炭素を取り込み、昼は水を逃がさないように気孔という小さな穴を閉じます。この光合成の方法をCAM型光合成といいます。
昼に気孔を閉じるCAM植物では、葉の中の二酸化炭素や酸素の量が、一般的な植物とは違う可能性があります。そのため、光呼吸や電子の逃がし方も違うかもしれません。
アガベの研究では、糖作りや電子の流れに関わる遺伝子が、昼と夜で働き方を変えることが分かっています(Yin et al., 2018)。
ただし、この研究だけでは、先ほど紹介した三つの仕組みのうち、どれがアガベで一番よく働くかまでは分かりません。今回調べた範囲では、それを直接比べた研究は見つかりませんでした。
赤くならないから、光に弱いとは限らない
葉が赤や紫になることは、植物が光から身を守る方法の一つですが、赤くならないから何もしていない、とは言えません。
葉の中では、次のようなことが起きている可能性があります。
- 光呼吸で、余った力を使う
- 余った光を、熱に変えて逃がす
- 電子を、別の出口へ流す
ただし、緑色の株なら強い光に当てても大丈夫、という意味でもありません。家では、葉の中の電子や活性酸素を測れないからです。
私たちが見られるのは、葉の色や手ざわり、新しい葉の状態などです。置き場所を変えるときは、葉が赤くなるかどうかだけで決めず、日差しを少しずつ強くしながら株の状態を見るほうが安心です。
この記事で分かったこと
- 強すぎる光は葉の中で余り、植物を傷つけることがある
- 植物には、余った光を使ったり、熱に変えたり、別の道へ流したりする仕組みがある
- 葉が赤くならなくても、光から身を守っている可能性がある
- 多肉植物やアガベで、どの仕組みが一番大切かはまだ分かっていない
研究で分かっていることと、まだ分からないことを分けて考えると、葉の色だけで株の強さを決めつけずにすみます。
Sources — 参考文献・原典
- PubMedで読む(PMID: 11128005)
- PubMedで読む(PMID: 22303256)
- PubMedで読む(PMID: 34305990)
- PubMedで読む(PMID: 38177155)
- PubMedで読む(PMID: 16245125)
- PubMedで読む(PMID: 24271819)
- PubMedで読む(PMID: 30081833)
※リンク先で、研究の対象や条件を確かめられます。研究結果をすべての植物や状況に当てはめられるとは限りません。
